ワタベウェディングの私的整理⑤_第二会社方式
こんにちは、八木です。
昨日、ワタベウェディング(以下、W社)はプレスリリースで、下記を発表しました。
- 借入金返済の一時停止の同意
- 今後の債権者会議の開催日程の承認
- プレDIPファイナンス10億円
(参考)W社HPより
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https://www.watabe-wedding.co.jp/library/pdf/corporate/ir/20210405_jp.pdf
今後、第2回債権者会議(4/26)で再生計画案の提示、第3回債権者会議(5/27)で再生計画案の決議に向けて債務整理の流れが進むようです。
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では今回は、中小企業の再生型M&Aで多く用いられる「第二会社方式」と呼ばれる再生スキームを解説します。
前回記事で、一般的なM&Aと再生型M&Aでは「事業の受け渡し方が異なる」とお伝えしました。
③ 事業の受け渡し方法(契約形態)が異なる
●一般的なM&A:株式譲渡(比較的シンプル)
●再生型M&A:事業譲渡か会社分割が一般的。譲渡対象の資産や契約を個別に指定して渡すため実務手続が複雑が、再生企業を買収する側のリスク軽減と債務免除する金融機関側の事情の両面より、事業譲渡か会社分割を利用した「第二会社方式」スキームを用います。詳細は次回解説します。
https://ca-p.co.jp/2021/04/31-2/
1.第二会社方式のイメージ図
全体の流れは下記のとおりです。
上段が買い手(スポンサー)、下段が売り手(再生企業)です。
- 再生企業の実態とスポンサー企業からの提案を踏まえて、再生企業の資産・負債をgood(譲受対象)とbad(対象外)に整理し、スポンサー企業はあらかじめ受皿会社(新A社)を設立する。
- スポンサー傘下の新A社は再生企業からgood事業・負債を譲り受け、再生企業へその対価(キャッシュ)を支払う。
- 新A社は、スポンサー企業の傘下で譲り受けた事業を継続する。
- 再生企業(旧A社)は、受け取った対価(キャッシュ)とbad資産を売却した資金で残った負債(bad負債)の一部を弁済し、特別清算手続で法人をたたむ(特別清算と同時に残った負債が免除される)。
なお、上記は事業譲渡を想定しており、会社分割では若干異なります。
2.一般的なM&A(株式譲渡)との比較
「スポンサーが再生企業の事業を円滑に引き継ぐ」という観点から、メリットとデメリットを整理しました。
メリット
- スポンサーは事業に必要な資産・負債のみを引き継ぐ
- 従業員は解雇→再雇用となる(事業譲渡の場合)
- 金融機関が債権放棄を判断しやすい(①一括弁済で2次破綻生じない(第二会社方式ではないW社の場合、分割返済が想定されている)、②残債の特別清算(金融機関から債務免除の手続を行う必要がない))
デメリット
- 手続や契約関係が複雑
- 許認可の承継に慎重な検討が必要(特に事業譲渡の場合)
- 取引先へ知らせる必要がある(法人が変わるため)
3.先日の勉強会でいただいた質問などより
① 誰がスキームを決めるのか?
通常、再生企業のスポンサー候補との折衝を担当するFA(フィナンシャル・アドバイザー)が、想定スキームを含めた諸条件を説明します。それを受けてスポンサー候補は提案内容を検討して買収提案(意向表明書)を提出し、最終的には売り手との協議によりスキームが決まります。
② 従業員はどうなるのか?
会社分割と事業譲渡では従業員の扱いが異なります。
会社分割の場合には、承継対象事業の従業員は原則として全員の雇用契約が承継されます。
事業譲渡の場合には、いったん退職の上で、新会社との雇用契約を再度締結します。
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以上のように、中小企業の再生型M&Aの多くは「第二会社方式」と呼ばれる再生スキームが用いられます。
一般的な株式譲渡のM&Aとは異なる視点が求められるため、債務超過の会社を売却する、または買収する際には、専門家の助言を受けながらの検討をお勧めします。
次回は、「ワタベウェディングの私的整理」シリーズの最終回として、同社の業績予測から「自力再生の可能性」を検討したいと思います。
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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。
あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。
株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅