ワタベウェディングの私的整理からの学び②

こんにちは、八木です。

前回に引き続き、3/19に発表されたワタベウェディング㈱(以下、W社)再建策の解説です。

前回の記事で、実質無借金で自己資本比率44%の会社が、わずか1年間で債務超過に陥るまでの流れ、を整理しました。

今回のテーマは、

「私的整理とスポンサー支援を含む再生スキームの概要」(3/19公表)

です。

2020年12月決算の時点では、現預金92億円、純資産△9億円(債務超過)の状態でした。

その後も2度目の緊急事態宣言の影響等も受けて赤字が続き、2021年2月末時点では、現預金が61億円まで減少しています。(純資産額の情報はありませんが、2020年12月末の△9億円より債務超過額が膨らんでいると推測されます。)

通常、再生スキームは、

  • 資本政策:経営主体を変更する
  • 債務整理:過剰に抱えた借入金や負債を整理する

から構成されています。

今回のW社の再生スキームの場合、

  • 資本政策
  • 興和㈱による増資
  • スクイーズアウトによる既存株主からの株式買取と非上場化
  • 債務整理
  • 事業再生ADR手続(私的整理)によるリスケジュールと債務免除

と整理をしてみました。

それぞれ独立した手続ですが相互に関連しており、複数の手続をひとまとめにした全体像を「再生スキーム」と呼んでいます

今回も、財務状況や株主変化の流れをスライドで追いながらご覧ください。

興和㈱による増資

  • フィナンシャル・アドバイザーを起用して、昨年11月頃からスポンサー探しに着手。
  • 事業会社やファンドなど約50社へ打診し、今年2月に興和㈱から提案を受領。興和㈱以外の候補先からは具体的な提案はなく、候補を興和㈱に絞り込んで条件を交渉。
  • 3/19に第三者割当増資による20億円(@40円×5000万株)の出資契約を締結
  • 20億円の増資実行により、W社の現預金と純資産が増加する(債務超過額が減る)
  • なお、事業再生ADR手続による金融機関の合意とスクイーズアウトの合意の両方が成立しないと実行されない。

スクイーズアウトによる既存株主からの株式買取と非上場化

  • 興和㈱は増資後の100%会社化を希望しているので、既存株主から株式を買い取る方法としてスクイーズアウト(株式併合)という手法を選択。
  • 既存株主からは、一株当たり@180円(興和㈱の払込金額@40円×450%プレミアム)で株式を買い取る
  • なお、主要株主の㈱千趣会、㈱寿泉、㈱ディアーズ・ブレインの3社からは、平均@40円で買い取る方向で各社と合意済(実際には平均@40円になるよう一部を無償譲渡する)。
  • 5万株を1株に併合して興和㈱の100%子会社化。上場も廃止する。
  • 以上の手続を経て、興和㈱がW社の株主(経営主体)となり事業が続けられる
  • 株主は入れ替わるが、W社自体はそのまま存続する。

事業再生ADR手続によるリスケジュールと債務免除

  • 金融機関にリスケジュールと債務免除を依頼するための手続として、「事業再生ADR手続」を選択
  • 3月末以降に返済期限を迎える借入金の元金返済を一時的に止めること(リスケジュール)を取引金融機関へ要請。
  • W社は、一部借入金の債務免除を含む事業再生計画を策定し、全ての取引金融機関からの同意を取り付ける
  • 金融機関から債務免除を受けることにより、W社の借入金が減り、債務免除益の計上で純資産が増加する(債務超過が解消する)
  • 残った借入金に対しては、興和㈱が債務保証を提供し、長期借入金に契約変更する。
  • 債務免除するのは金融機関のみで、その他の債権者(仕入先や前払金を支払っている顧客など)は対象外。

今回、W社が上場会社のため、資本政策では増資やスクイーズアウト、非上場化等のスキームを選択しています。

私自身が実務で数多く経験してきた非上場会社(いわゆるオーナー会社)の場合には、スポンサー選定のプロセスはほぼ同様ですが、経営主体を変更するスキームと手続が異なります

また、金融機関からリスケジュールと債務免除を受けるための手続も、事業再生ADR以外にも複数の方法があります。

今回はここまでとして、次回は「債務整理の手法」ついて解説します。

※本日の内容は、下記のW社プレスリリースに詳細が記載されています。

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https://www.watabe-wedding.co.jp/library/pdf/corporate/ir/20210319_n5.pdf

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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。

あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。

株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅