ワタベウェディングの私的整理からの学び①
こんにちは、八木です。
3/19に婚礼大手のワタベウェディング㈱(以下、W社)が、私的整理とスポンサー支援を含む再建策を発表しました。
コロナによる影響を直接受けた業界を中心に、同様の課題を抱えている会社も多いのではないでしょうか。
W社の私的整理を理解することが、先行きのない状況に苦しむ経営者にとって「事業を守るヒント」になるかもしれません。
W社WEBサイトから入手可能なプレスリリース等の公開情報と、私自身がこれまで多数の事業再生支援に携わった経験に基づき、以下のポイントの解説を試みることにしました。
- 実質無借金経営から、わずか1年で債務超過に至った経緯とは?
- どのような再生スキームを予定しているのか?
- 事業再生ADRを含む、債務整理の手法とは?
- 興和㈱をスポンサーに決めるに至った、再生型M&Aの流れとは?
- 他に選択肢はなかったのか?
なお、W社の再生手続は現在進行形で進んでいることから、原則として、公表された情報に基づく事実のみを記載し、弊社や私個人による見解等を記載する場合には、明確に区別できる形で表示します。
まず今回のテーマは、
- 「①実質無借金から、わずか1年で債務超過に至った経緯」
です。
理解しやすいよう図解したので、スライドを参照しながらご覧ください。
【1年前の財務状態】
- 2019年12月決算期末時点では、借入金23億円に対して現預金46億円と実質無借金。
- さらに総資産251億円に対して純資産111億円あり、自己資本比率は44%。
- 【2020年1~12月の収益とお金の流れ】
- 海外挙式の中止や、国内でのホテル利用大幅減少等により、売上は前年比△61%の197億円。
- 人員削減や広告宣伝費抑制、資産売却、雇用助成金活用などに取り組んだものの、減収を補うほどのコスト削減は難しく、当期純利益は△117億円(前年2億円)まで落ち込んだ。
- 大幅な赤字転落を主な原因として営業キャッシュフローは△118億円と多額の資金が流出したが、130億円のコロナ融資(2021年4月)、30億円の当座貸越設定(2021年11月)などの借入を増やすことで、1年間の資金繰りを維持した。
- 【2020年12月の財務状態】
- 2019年12月期末時点の純資産111億円を上回る赤字(△117億円)なったため、2020年12月決算は(111億円+△117億円≒)△9億円の債務超過となった。
- 同時に、借入金を一気に160億円増やしたため、1年前にはわずか23億円だった借入金が185億円に急増した。
- 借入金の大半が短期借入金で、うち113億円は2021年3月末が返済期日となっており、この返済資金の捻出が困難な上、返済猶予についても全取引金融機関の応諾を得る余地がない状況にあったとのこと。
これらの状況を受け、3/17に興和㈱による増資とスクイーズアウト、非上場化、事業再生ADR手続による債務免除等を柱とした再建策を発表するに至ったようです。
今回はここまでとして、次回、公表された再生スキームの概要を解説します。
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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。
あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。
株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅