ワタベウェディングの再生計画_債務免除額の決まり方とは?
こんにちは、八木です。
以前も私的整理手続について解説したワタベウェディング㈱(W社)より、「事業再生ADR手続成立」のプレスリリースが公表されました。(5/27付)
(参照)W社プレスリリース
https://www.watabe-wedding.co.jp/library/pdf/corporate/ir/20210527_jp.pdf
※上記以外にも増資完了や上場廃止予定など複数のプレスリリースを公表しています。
当初のスケジュール通り、5/27に金融機関からの債務免除等の合意が得られ、6/1付で興和からの増資が完了し、今後、上場廃止や株式併合の手続きを進めていくようです。
発表によると、総額185億円の金融機関借入金は、
- 債務免除約91億円(6/1実行)
- 分割返済94億円(2023~2030年の8年間)
に分けられていました。
では、債務免除額はどのような考え方で決まるのでしょうか?
もちろん実際には様々な要素が影響していますが、今回は、重要な点として以下の2点を取り上げます。
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1.純資産の視点:計画3年目終了時までに実態債務超過が解消しているか?
2.キャッシュフローの視点:今後のキャッシュフローから分割返済ができそうか?
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ます、「1.純資産の視点」について
プレスリリースを参考に実態純資産の推移のシミュレーションしてみました。
実態債務超過解消までの流れは以下のとおりです。
- 2021.3末時点の実態債務超過△87億円。
- 今後の赤字で最大△131億円まで債務超過額が膨らむ。
- 金融機関の債務免除で得られる利益(債務免除益)+91億円と興和からの増資+20億円で一気に債務超過の大半を埋める。
- 引き続き債務超過が続くが、2年目以降の黒字で徐々に圧縮する。
- 3年目終了修了時点での実態債務超過解消。
ちょうど計画3年目終了時点で実態債務超過が解消される計画になっています。
一般的に、金融機関は実態債務超過解消が3年以内(中小企業の場合は5年以内)になる再生計画を求めます。
今回、実態債務超過額のピーク△131億円を埋めるための方策として、
- 計画3年目までの本業での利益
- 興和からの増資
- 債務免除益
の3つがあり、実態債務超過解消するには「①+②+③>131億円」となるように組み合わせることが必要です。
利害関係者の視点から見ると、
- W社自身の事業の見通し(興和や金融機関の意見も反映)
- スポンサーとしての興和の意向
- 金融機関の事情
の3者(主に②③)の利害調整を通じて、「①+②+③>131億円」となるように①~③の各金額を決めていく、ということになります。
①はW社の過去の業績から上限が予測でき、②は買収提案時点でおおよその金額が見えていたことを踏まえると、①②が先に見えている状態で、
- 足元の赤字がいつまで続き、実態債務超過が最大いくらになるのか?(本試算での結論は131億円)
- 上記を踏まえ、金融機関の債務免除額(③)をいくらにするのか?
が焦点になったと思われます。
特に、金融機関は、
- 債務免除額は少しでも減らしたい
- 一方で、分割返済も確実にしたい
という両面を考慮する必要があるため、これらのバランスを取ることは非常に重要になります。
それ以外にも、たとえば、
- 債務者区分と貸倒引当金
- 清算配当率(経済合理性)
- 担保有無
- タックスプラン
など、様々な視点を考慮して①~③の金額バランスの調整が行われます。
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もうひとつのテーマ、
「②キャッシュフローの視点:今後のキャッシュフローから分割返済ができそうか?」
については、改めて書きたいと思いますので、お楽しみに。
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株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅