ワタベウェディングの私的整理からの学び③

こんにちは、八木です。

引き続き、ワタベウェディング㈱(以下、W社)が発表した私的整理とスポンサー支援を含む再建策からの学びです。

前回記事で、通常、再生スキームは、

  • 資本政策:経営主体を変更する
  • 債務整理:過剰に抱えた借入金や負債を整理する

の2つで構成されると書きました。

今回は、「債務整理」に関して、

  1. 債務整理とは何か?
  2. なぜ債務整理が必要なのか?
  3. どのような手法があるのか?

などをご紹介します。

1.債務整理とは何か?

債務整理とは、

  • 過剰な負債(借入金)の一部免除を受ける手続

です。

もちろん債務者が一方的に踏み倒すのではなく、債権者との協議によって整理します。

負債が増える要因は、

  • 赤字決算
  • 投資の失敗
  • 大口先の貸倒発生

など様々です。

「破産手続」で会社をたたむ場合には、返しきれない負債が強制的に免除されますが、事業を続ける場合にも、負債の一部を免除してもらう手続が整備・利用されています。

2.なぜ債務整理が必要なのか?

様々な理由で存続が難しくなってしまった事業でも、債務整理を組み合わせることで、支援企業(W社の場合は興和㈱)に引き継がれる形で事業を存続できる場合があります。

事業再生において債務整理が検討されるのは、

  • 事業には可能性があるが、負債額が大きすぎる
  • このままではいずれ破産せざるを得ない(資金が回らなくなる)

2つの条件を満たす場面です。

債務整理が必要か否かの判断はケースバイケースですが、大半の場合、W社のようにM&Aによる経営主体の変更が伴います。

支援企業と債権者(金融機関)がそれぞれ、

  • 支援企業:事業には魅力があるが、過大な負債は引き継げない
  • 債権者(金融機関):破産して全く回収できないよりは、一部を債権放棄してでも残りの返済を受けた方がマシ(経済合理性がある)

と考える状況が揃うことで、

  • 負債(借入金)の一部を免除する(債務整理)
  • 支援企業が必要な対価を支払い事業を引き継ぐ(資本政策)

を組み合わせた再生スキームが成立します(どちらか一方だけでは成立しません)。

3.どのような手法があるのか?

主な手法を、下図にまとめました。

まず、裁判所の関与しない「私的整理」と、裁判所の関与する「法的整理」の2つに大別されます。

「私的整理」は債務整理の対象が金融機関のみの場合に用いられる手続きで、最も件数が多いのが「中小企業再生支援協議会」を利用した手続です。W社が利用した「事業再生ADR」は主に上場企業が利用する手続です。

「私的整理」は、「法的整理」と比べると以下のメリットがあります。

  • 仕入先や取引業者の債権が保護されるのでスムーズに事業を継続しやすい。
    (特にW社の場合、ブライダル事業で多数の個人顧客から預かっている前払金を保護できます。)
  • 関係者以外に情報開示しないので、信用不安が生じにくい。
    (上場企業の場合は適時開示により情報開示されています。)

「法的整理」は、事業存続させる「再生型」と、事業をたたむ「清算型」の2つに分類されます。

「再生型」では主に「民事再生」が利用され、「清算型」では「破産」が選択されます。

「民事再生」(法的整理)は、「私的整理」と比べると以下のメリットがあります

  • 債務整理の対象が広がるため、多額の債務免除が必要な場合に対応しやすい。
  • 多数決での決議となるため、合意形成が容易な場合が多い。

実務では、まずは「私的整理」を優先的に考え、難しい場合には「法的整理」を選択する、という順番で検討します。

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今回はここまでとして、次回は「資本政策」(再生型M&Aの流れ)を解説します。

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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。

あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。

株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅