立ち飲み寿司の収益モデルとは?
こんにちは、八木です。
久し振りの更新になります。
先日、遅めのランチで「立ち飲み寿司」に入りました。
14時前後の中途半端な時間にも関わらず、カウンターのみの小さなお店が7~8割方埋まっていました。
後日、そのお店がテレビ出演していたと聞いて確認すると、「15坪で月商1,100万円」(番組タイトルより)の繁盛店でした。
どれくらい儲かっているのか気になり、この店の収益モデルをシミュレーションしてみました。
仮定に基づくシミュレーションですが、自社のビジネスの収益構造を分解し、打ち手を検討する際の「考え方」の参考になれば幸いです。
今回、以下の情報を参考にしました。
- 私が実際に訪問した際に観察したこと
- 食べログ
- テレビ番組の紹介(実際の番組は見ていません)
ではまず、お店の概要から。
- 立ち飲み寿司(椅子あり)
- 大阪・梅田の商店街沿いのビル1階
- カウンターのみ10席
- 営業時間:12~23時
- 面積7.5坪(※)
- 月商550万円(※)
- 平均客単価:2,500円(推測)
- 従業員:4名(接客2名と職人2名)
※「15坪で月商1,100万円」ですが、2店舗あるので単純に2で割って1店舗当たりとしました。
1.7.5坪で月商550万円を稼ぐために必要な客数と座席回転数は?
- 月商550万円÷営業日数30日=日商18.3万円
- 日商18.3万÷平均客単価2500円=1日平均客数73名
- 1日平均客数73名÷10席=1日平均7.3回転
一般的な飲食店の場合、ランチとディナーのピークタイムに来店が集中するため1日7.3回転は難しそうですが、立ち飲み寿司という業態だとランチとディナーの間もある程度来店客が見込めるため、高い回転率を実現できているのかもしれません。
2.月商550万円で利益はどれくらい残る?
- 月商550万円×粗利率60%(仮定)=粗利330万円
- 人件費:従業員4名×人件費単価@1,500円(社員とアルバイトの平均)×勤務時間15h(営業時間11h+準備時間4h)×営業日数30日=月270万円
- 家賃:@坪2万円(仮定)×7.5坪=月15万円
- 設備内装:初期投資500万円(仮定)÷償却期間60ヵ月(5年毎に再投資と仮定)≒月8万円
- よって、人件費270万円+家賃15万円+設備内装費8万円=固定費293万円
- 結論として、粗利330万円−固定費293万円=利益37万円(利益率6.7%)
人件費が売上の約半分を占めています。
お客さんの人数と関わりなく一定の人数が必要なので固定費です。
営業時間の設定やシフトの組み方などが利益に大きく影響しそうです。
ちなみに、人件費を従業員の視点から捉えると、以下のようになります。
- 人件費単価@1,500円÷115%(会社負担の法定福利費等を控除)≒平均時給@1,300円
- 平均時給@1,300円×1日勤務時間8h×出勤日数22日≒月平均給与23万円
社員とアルバイトの構成は?どんな人材が欲しいか?どの程度の給与水準か?なども大切です。
3.損益分岐点は?
- 固定費293万÷粗利率60%=損益分岐点売上高488万円
- 損益分岐点売上高488万円÷営業日数30日=1日当たりの損益分岐点売上高16,3万円
- 1日当たりの損益分岐点売上高16.3万÷平均客単価@2500円=黒字に必要な1日平均客数65名
- 黒字に必要な1日平均客数65名÷10席=黒字に必要な1日の座席回転数6.5回
よって、
- 1日平均客数:現状73名と損益分岐点65名の差は8名。
- 1日座席回転率:現状7.3回と損益分岐点6.5回の差は0.8回
いかがでしょうか?
限られた座席数で営業しているからこそ、時間帯や曜日、天候、季節などに関わりなく、コンスタントにお客さんに来ていただく必要がありそうです。
4.ランチメニューをやるべき?
ここまではランチメニューのない前提で考えてきましたが、実際にはランチメニュー1,000円をやっている日もあります(実際には990円ですがわかりやすく1,000円とします)。
通常メニューでは平均客単価2,500円の中、客単価を落としてまでランチメニューをやる必要はあるのでしょうか?
お客さんによって滞在時間はバラバラなので、「客数」ではなく「座席の稼働」から「1座席当たり1時間でいくら売上を稼げばいいのか?」を考えてみます。
まず座席数ですが、現実には10席が常に埋まっている状況は考えづらいので、平均8席が常に稼働していると仮定します。
- 平均稼働座席8席×営業時間11h=1日延べ稼働座席88席
- 1日延べ稼働座席88席÷1日平均客数73名=1人当たり平均滞在時間1時間12分
- 平均客単価2,500円÷1人当たり平均滞在時間1時間12分≒1時間当たり平均売上2,080円
つまり、通常メニューでは「座席が8割稼働して、1時間当たり2,000円注文をもらえている」ということです。
では、1,000円のランチメニューの場合はどうでしょうか?
粗利率を通常メニューと同じく60%と仮定すれば、ランチメニューを頼むお客さんの滞在時間30分以内で、1座席あたり1時間に2名のお客さんに来店してもらえれば通常メニューをと同じ利益が残る計算になります。
私が実際にランチメニューを食べた感覚として、実際に30分以内は厳しそうだと感じました。
一方で、
- 通常メニューだけだとランチ時間帯は席が埋まりにくい。
- ランチメニューは単一メニューなので粗利率が高い。
- 食材が残ってもその後の営業時間で使い切れる。
- 新しいお客さんを獲得するきっかけとしてランチが効果的。
なども考慮すると、ランチメニューを導入するメリットがあるのかもしれません。
飲食店に限らず経営のセオリーもあると思いますが、実際には店によって事情は異なるため、このように細かく数字を分解して考えます。様々な角度から分解することで新たな発見もあります。
そのうえで、
- 客数を増やすのか?
- 単価を上げるのか?
- 粗利率を上げるのか?
などの優先順位付けや、それぞれ具体的に何を取り組むのかを試行錯誤し続けることが繁盛店への道ではないでしょうか。
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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。
あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。
株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅