観光地の「写真撮影サービス」、儲かるの?
こんにちは、八木です。
先日、大阪の通天閣に初めて行きました。
(通天閣の公式サイト)
https://www.tsutenkaku.co.jp/
入場料を支払って展望台にのぼる途中に、観光地でよく見かける「無料で写真撮影をして、写真を買ってもらう」サービスがありました。
来場者全員が通る通路上に撮影場所があるので、係の方が声をかけて撮影を促すのではなく、全員が(自然と?強制的に?)撮影される動線になっています。
私は買いませんでしたが、このビジネスの採算が気になったので、ビジネスの裏側を想像しながらざっくりと試算してみました。
前提条件
- 入場者数は年間100万人(コロナ以前は100万を超えていたそう)
- 1日当たりは、100万人÷365日≒3,000人(繁閑は考慮せず)。
- 平均2名1組で来場すると仮定すると1,500組。
- 1組に1枚写真を撮影すると仮定(つまり1日に1,500枚撮影)。
- 写真の販売価格は1枚当たり1,200円(税抜き1,090円)
- 通常時の営業時間は8:30~21:30(13h)
1日当たり固定費
①人件費
- 案内係、撮影係、販売係の3名
- 時給1,000円のアルバイト
- 3名×時給1,000円×13h=39,000円/日
②機材やセット代
- 撮影機材やセット製作費用をざっくり100万円と仮定
- 毎日使い倒すので、1年で償却して毎年新たな設備に更新するとした
- 100万円÷365日≒3,000円/日(1年で償却・更新と想定)
③L版写真プリント原価
- ネットプリント利用時の費用等から1枚当たり10円と仮定。
- 売れる、売れないに関わらず撮影枚数すべてにかかる。
- 1枚当たり10円×1,500組=15,000円/日
まとめ
1日当たり固定費は、
①+②+③=57,000円
ちなみに変動費はゼロと考えました。
損益分岐点
以上より、
- 固定費57,000円÷1枚当たり売上(=粗利)1,090円≒52,3枚
つまり1日当たり「53枚以上」売れば損益分岐点を上回り、売れた分は丸々利益になります。
この「53枚」というのは、
- 1日1,500組の来場者のうち、わずか3,5%。
- 28回撮影して1回売れればOK(1,500÷53)。
さらに、
- 53枚÷営業時間13H≒4.1枚/h
- 1日1,500組÷営業時間13H≒1時間当たり115組/h
- 1時間に115枚の写真を撮って、5枚以上売れば黒字。
という数字です。
皆さんはどう感じましたか?
数字だけ眺めると、割と利益が出やすそうなビジネスのようにも見えます。
私自身はこの手の写真を購入したことはありませんが、たとえば、子供や孫と観光に来たシニア世代の方や、海外からの観光客の方などの中には購入する方もいそうです。
押し売りさえしなければ、不要な人は断ればいいし、欲しい人は買えばいいので、施設内で追加収益を稼ぐには悪くないサービスかもしれません。
オペレーション上の工夫
1時間に115枚の写真を撮影するということは、1組平均30秒で撮影と販売を回していく必要があります。
撮影場所は展望台へのエレベーターを乗り換える2階にあります。
2階までは小さなエレベーターでのピストン輸送なので、エレベーター1台に付きせいぜい3~4組程度です。
大半の来場者にとって「余計なサービス」である写真撮影のために行列ができることはクレームにつながる可能性も高く、避けたいところですが、最初のエレベーターに乗った後に撮影場所を置くことで、来場者の流れを平準化させ、行列ができにくい構造になっていると感じました。
ちなみに、通天閣は展望台自体があまり広くなく、エレベーターも小型です。
地下にある入口で係の方が1名でチケットを手売りしており、一見非効率に見えますが、入口で来場者の流れを調整することで、一定以上の人数が施設内に入らないようにコントロールしているようでした。
こういったハコものの運営ではよくありますが、おそらく休日の日中などの繁忙期に来場者を伸ばすことは難しく、閑散期の平日や早朝、夜間などに利用者を増やすことでしか入場料収入を伸ばすのは難しいのではないかと感じました。
平日の利用も多かったであろう海外からのインバウンド客が途絶えている現状はなかなか厳しそうです。
購入率を引き上げるには?
①声掛けマニュアルの整備
買うか買わないかの判断は一瞬です。買う方の大半は衝動買いではないでしょうか。
案内係が「買いたくなるようなポーズや表情をさせる」、販売係が「買いたくなるようなフレーズで声をかける」ことができるように研究し、マニュアル化して運用できれば購入率を伸ばるのではないでしょうか。
係の方にもよるのかもしれませんが、私が行った際は、この点はあまり工夫がなかったように感じ、改善の余地がありそうです。
②データ販売
撮影した写真をプリントすること自体が少なくなっており、プリントした写真を売る、という形態だけでは、今後のジリ貧が見込まれます。
プリントした写真をセットでデータももらうことができれば、購入する来場者が増えるのではないでしょうか。
③設置場所の変更
スペースが狭いので実際には難しいかもしれませんが、通天閣が売りにしている屋上展望台の出っ張り部分で写真撮影サービスをすれば、購入率を大幅に引き上げることができるのでは?と思いました。
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実際にはもっと複雑ですし、前提条件に誤りがあるかもしれませんが、具体的な数字を見ていくことで様々な気付きが得られます。
日々取り組まれているご自身のビジネスを、様々な角度から数字で分解してみてください。きっと新たな気付きがあるはずです。
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最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。
あなたのビジネスを発展・成長させるヒントになれば幸いです。
株式会社C&Aパートナーズ
代表 八木雄毅